2021.03.11

「渋谷にいるとき地震が起きたらどうなる?」ライター5歳が危機管理アドバイザーの国崎先生に話を聞いてみた

他県から渋谷近くに引っ越してきてもうすぐ1年のライター5歳。仕事で渋谷駅近隣に自転車で通っています。この生活にも慣れてきたところで考えたのが「もしも大きな地震が起きたら……?」ということ。つい先日も地震があり、渋谷区も揺れを観測したばかり。

そこで今回は防災のプロフェッショナルである、危機管理教育研究所代表・危機管理アドバイザーの国崎信江先生にお話を伺いました。

5歳
本日は、大きな地震が起きたら僕たちはどう対処していけばいいのかについて伺いたいなと思っています!

国崎信江さん
まずは災害時における人の行動心理からお話していきましょうか。震災などの大規模災害が起こったとき、75%の方は思考停止状態になってしまうんですね。


そんなにですか!? ほとんどの人が頭真っ白になっちゃうんですね。


目の前で起こるあまりの突発的な変化に、多くの人はすぐには状況を受け入れられなくなってしまうんです。経験のない事態に脳の処理が追いつかず、ボーッと見ているような状態ですね。


たしかに、気持ちはわからなくもないです。


その他の15%の方は、我を失って泣き叫ぶなど、自分の感情を表に出して衝動的な行動を取ります。


パニック状態になっちゃうんですね。


そうなんです。そして、パニックを起こした方の行動を見た、75%の思考停止状態に陥ってしまった方々もそれに同調しやすくなります。例えば1人が走り出すと、その行動につられてみんなも同じ方向に走り出してしまうような感じですね。その結果、将棋倒しのような事故に繋がってしまうことも考えられます。そこで、冷静な判断ができる残りの10%の存在が重要になってきます。


なるほど。


冷静に行動できる方が、いかにリーダーシップをとって人々を落ち着かせられるか。このときに大切なポイントは、集団を落ち着かせるためのタイミングです。震災で揺れが収まったあとにシーンとする、一瞬の間がありますよね。その瞬間にリーダーとなる方が声を出せるか否かで、状況はだいぶ変わるんです。


被災直後の行動が重要ってことですね。


その一瞬のタイミングを逃してしまうと、周囲の人々はパニックを起こしはじめ、リーダーの声が届かなくなってしまいます。


じゃあ、迷っている時間はないですね。


そうなんです。すぐに声を上げる勇気はもちろんのこと、思い切って少し強い口調で指示を出すことも必要です。間髪入れずに「みなさん、落ち着いてください!」と言うだけでも、雰囲気はガラッと変わるはずです。


たしかに、リーダーがいるだけで安心感があります。


最初に声をあげる方だけでなく、震災の知識がある方もリーダーに適任です。避難所の位置を把握している方々が積極的に話し合いをすることで、より正しい行動を取ることができます。


いざ災害が起こったとき、冷静に行動するにはどうしたらいいですか?


大切なのは普段からイマジネーションを働かせておくことです。もし被災したら自分はどう行動するだろうかと考えてみるのです。地震発生の時間帯やそのときいる場所によって、取るべき行動は変わってきます。イメージしていないことは行動に移せませんから、日頃から想定しておきましょう。


例えば渋谷駅近くで昼の時間帯に大地震が起きたら、どんな危険性がありますか?


渋谷はビルが密集しているので、看板やガラス、外壁などさまざまなものが上から降ってくる可能性があります。どんなに小さなものでも加速度がつくと非常に危険です。カバンなどで頭部を守りながら速やかに丈夫な建物に避難してください。


事前にイメージしておけば、すぐに建物の中に駆け込めそうですね。


屋内にいることも考えてみましょう。例えば、エスカレーターに乗っているさなかに揺れたとき、「手すりにつかまれ!」と誰かが声に出せば、周囲の人も瞬時に反応し身を守ることができます。たったひとりの声かけでも多くの方々の怪我を防げるかもしれません。


これからエスカレーターに乗るときはいつでも声を出せるように準備しておきます。


渋谷という地名からもわかるとおり、渋谷は谷地形です。わかりやすいのが地下鉄銀座線です。隣の表参道駅は地下にあるのに、渋谷駅は地上3階。それだけ渋谷は谷になっているんです。


たしかに自転車で渋谷に向かうと、くだり坂が多いですからね。


渋谷駅周辺は盆地状の氾濫低地という軟弱地盤です。他にも都市部は海を埋め立ててできたエリアが多いので、大きな地震が起きたら、液状化したり道路が波のようにうねったりするでしょう。そうなると走行中の車両がコントロールを失い、車両同士が衝突するなど、大混乱が生じるかもしれません。


その場にいるだけで危ない場合もあるわけですね。


そうなんです。災害時は予想できない事態が多々起こりますが、それでもある程度はハザードマップや被害想定からどのような被害が起こるのか、普段からできる限りイメージしておくことが大切だと思います。とくに、外出するときには無防備にならないように備えていただきたいです。


つまり、防災グッズ的なものってことですか?


そうです。非常用の持ち出し袋に入れるアイテムを携帯するのが理想的ですが、それは非現実的なので、必要最小限持っておくといいものを何点か紹介しますね。こちらは実際にわたしのカバンの中に常に入っているものです。

まずはヘッドライト。都市部では日差しが入らない建物も多いので、もし屋内で停電したら、非常照明があっても不安になるでしょう。そんなときに両手が使えるヘッドライトがあれば安心です。近年はコンパクトで軽量なものが売られていますので、バッグに入れてもかさばりません。

また、ゼリー飲料と簡易携帯トイレも持ち歩いています。もしエレベーターに閉じ込められた場合、夏の時期は水分補給ができなかったら熱中症になってしまうかもしれません。また、水分補給をすると気になるのがトイレです。
これらの課題を解決するのがゼリー飲料と簡易携帯トイレです。ゼリー飲料はコーヒーやお茶と違ってカフェインが入っていないので、利尿作用が低く、水分とエネルギーが摂れて腹持ちもいいのでオススメしています。

さらに、都心部ではガラスやコンクリート片などの落下物によってケガをするかもしれません。なので、止血パッドのような応急手当ができるものもカバンに入れています。

最後が、モバイルバッテリーです。救助を要請する手段としても、災害時は携帯電話が心のよりどころになると思いますので、電源が切れないよう、常にモバイルバッテリーを持ち歩くことをオススメします。


ヘッドライト、ゼリー飲料、簡易トイレ、止血パッド、モバイルバッテリー。これくらいなら、バッグに入れて持ち運びできそうですね。


防災というと、面倒で大変なことと思われがちですが、すぐできることとしてイメージするのが大切です。もしここで地震が起きたら、自分はどういう判断や行動をしたらいいのか。そういったことを日々の生活の中で考えておくだけで、いざ災害が起きたときの行動が変わってくるはずです。それがご自身の身を守ることに繋がりますので、できることから取り組んでいただければと思います。

  • Interviewer
    5歳
    37歳ライター、可愛い嫁と、息子が2人。Twitterで家族について呟いています。Twitter:@meer_kato
  • Writer
    池田あゆ里
    愛知県生まれ、神奈川県在住。インタビューライターとして年間100人のペースでインタビューをしている。社交ダンスの講師としても活動。noteでは「1000文字エッセイ」や、文章ノウハウを発信しており、誰かを勇気づける文章を目指して、活動の枠を広げている。Twitter:@ayuri_0129

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