もしもインタビュー 梶川建設篇 後編
創業116年目にチャレンジを始めた業界変革
(もしも)昔から言われている建設業界のイメージというと、「きつい・きたない・危険」の「3K」がありますよね。そのイメージを「かわいい・キレイ・キラキラ」に変えていこうという御社の「3Kプロジェクト」。なぜ創業100年を超えるような老舗企業がこのような取り組みを始めることになったのでしょうか?
(梶川さん)幼い頃の経験からスタートしているんです。私が幼い頃というと今よりももっと建設業に対する悪いイメージがあったんです。「土建屋の息子」だからとイジメにあったこともありました。幼かったこともあり、父の仕事の内容まではよくわかっていなかったのですが、自分の家が建設業をやっていることに対してなんでそんな言われ方をしないといけないのかな?と思ったりもしました。絶対に建設業は継がないとトラウマになっていた時期もありましたね。ですが、中学生になってアルバイトとして現場に入らされた時に、あるきっかけがあって家業を継ぐ覚悟を決めました。当時札付きのワルで有名だった2つ上の中学の先輩が卒業後に、うちの会社に入社していたので、「うわぁ〜、すごい人が来ているな」と思っていたのですが、以前の先輩とは全く違うイメージですごく真面目に仕事をしていらっしゃってとても驚かされました。休憩の時に、先輩から缶コーヒーをいただいて、一緒に飲みながら、年も2つしか違わないのに「お前、頼むぞ。お前に俺たちの未来がかかってるんだぞ。」と言われて、、、その時に自分だけのわがままな気持ちだけで会社を継ぐのを拒否するのはいけないことだと思って決意したんです。建設業を継ぐってなった時に、今は低く見られてしまっている建設業をもっと世間の皆さんに知ってもらうことによって、たくさんの方に認めていただける業界になれたらという夢を持つようになって、それが原点になっています。
(もしも)幼い頃にそんな経験をされていらっしゃるんですね。そこからどのようにして「3K」プロジェクトにつながっていったのでしょうか?
(梶川さん)そうは思いながらも、なかなか実現する手立てがなくて、、、そうしたときに巡り会ったのがアソビシステムさんだったんです。例えば、ユニフォームを変えるといったアイディアをいただいたり、アニメーションというもので建設の現場を描くといった自分たちでは想像もつかないアイディアをいただいて、「3Kプロジェクト」が実現したんです。まさに切り口を変えて、建設現場のポップなところを見ていただけるようにしていただきました。今後も、「もしもプロジェクト」と「3Kプロジェクト」のキャラクターを使ってバルーンライトやカラーコーンを置いていただいたりすることで、さらに多くの方に見ていただき、建設業界に少しでも興味を持ってもらえるきっかけになっていくと思ってます。
(もしも)アソビシステムさんとはどのようなきっかけで出会われたんでしょうか?
(梶川さん)建設業界の中でも、弊社は新卒の採用活動が非常に困難を極めてまして。新卒採用で色々な工夫をしていたときに、採用活動の一環でアソビシステムの中川社長をお招きして、ディスカッションをさせていただく機会があったんです。そのディスカッション前の控室で中川社長といろんな話をさせていただいている中で、「かわいい文化を応援していく」ということをやっていきたいと思い、弊社も「かわいい」を発信していくことになっていったんです。
(もしも)そうなんですね、社長同志の出会いから始まって、ここまで継続されてきたんですね。アニメーションの公開から1年が経つ今、「3Kプロジェクト」で感じている手応えはありますか?また、今後取り組んでいきたいことはありますか?
(梶川さん)「3Kプロジェクト」の「現場の女神」をSNSで発信することになってから、すごく若い方に興味を持っていただけるようになりました。建設業の工事現場を見てもらったとしても、ピンと来るものがなく、興味を持っていただけずに終わってしまっていたのですが、建設会社でありながら新しいものに挑戦しているという姿がどうやら今時の若い方にすごく刺さりまして、梶川建設に興味を持ってもらう最初のきっかけになってくれていると感じています。その上で、今の「現場の女神」は建設現場のポップな部分にフォーカスした内容になっていますが、今後は先程から話しているような本業でもある「防災・減災」の方へもう少しシフトしていきたいと考えています。
(もしも)実際に興味を持っていただけるきっかけになっているというのは素晴らしいことですね。
(梶川さん)そうなんです。やはりアニメーションの人を惹きつける力というのは本当に大きいんだなと実感させてもらっています。当社にエントリーをして、最終選考まで進んでいただく中で面接を重ねるのですが、その中でまず絶対にこの「現場の女神」の話題は出てくるんです。たくさんの企業の中で選ばれるために、印象に残る必要があるのですが、そこに大きく寄与してくれていると感じています。また、学生さんの採用活動以外でも、営業活動などに役に立っているんです。我々のお客様はスーパーゼネコンであったり、大手の建設会社さんだったりするんですが、そういった会社さんの中にも建設現場をアニメーションで描くといった取り組みをしているところはあまりないので、印象に残りやすいらしく良い形で影響してくれているようです。
(もしも)なるほど、多くの会社がある中で、他の企業さんがあまり取り組んでいない形だからこそ、興味を持っていただけているんですね。どんな学生さんが御社に応募されるケースが多いんでしょうか?
(梶川さん)建設業だからといって、建築系の学校や学部を出た方が多いわけではないんです。8割方はいわゆる文系の学生さんです。その中でも、東日本大震災などでボランティア活動に参加したことがあるといった方に応募いただけることがあります。そういった活動を通じて、公共心が芽生えたというのが応募の理由になっているようですが、世の中のために自分たちが力になれるのではないかと希望を持って当社に応募してくれる方がたくさんいらっしゃることにとても感謝しています。よく「今時の学生さんは・・・」とか、「今時の若い人は・・・」みたいな言われ方をすることもあるかと思いますが、そんなことはないですよ、と私は強く言いたいですね。世の中のために尽くしたいという想いをもってお越しいただく学生さんが本当にたくさんいらっしゃると私は実感しています。
(もしも)とても素晴らしいですね。これからますます若い人たちの間では、世の中のために自分ができることをするという考えや、世の中に仕事で貢献していきたいという考えが普及していくでしょうし、逆に上の世代の人たちはそういった考えを尊重し、応援していけるように世の中を変えていかないといけないのかもと感じました。梶川建設さんの新たなチャレンジを通じて、建設業界のイメージが変わって、想いをもった人たちが集まり、誇りをもって働けるような業界イメージが根づいたら、本当の意味で国が掲げている「国土強靭化」につながっていくのかもしれないですね。
建設現場から得られる「もしも」のヒント
(もしも)建設現場では当たり前の知識だけど、一般の人にはあまり知られていない「もしも」の時に役立つ知識があったら教えてください。
(梶川さん)我々建設業界というのは一つ間違えば危険になってしまう気をつけなければならない現場というのもあるので、当社に限ったことではないと思いますが、そういったときに備えて建設の現場に入った際に「安全唱和」というのをやっています。キーワードがいくつかあるんです。例えば、「安全は一人一人が責任者」とか、「入場時、危険を見破る目で点検」などといった標語のようなものがいくつもありまして、それを現場に入る前に毎回みんなで復唱するんです。当たり前のことなんですが、毎日建設現場で仕事をしていると、頭から抜けてしまいがちというか、危険意識が薄らいでしまう、そんな場合に備えて、毎回いくつかのキーワードをピックアップして、みんなで言葉に出すことで意識するようにしている。
このように、何気なく生活をしているとつい忘れてしまいがちな災害の危機意識というのを標語のようなものにしていくつも作っておいて、それを定期的に切り口を変えて復唱することによって、危機意識を思い返すきっかけを作ることができるのではないでしょうか?
(もしも)ありがとうございます。大きな震災が起こった日や防災の日などの節目の時に、繰り返し繰り返し伝えようと情報を発信し続けることが重要なのかもしれませんね。
(梶川さん)5月に渋谷駅で掲出していた看板には過去の大きな震災の時刻がたくさん載っていましたよね?私も見に行ったときに、こんなに多くの大きな震災が起きているのかと驚かされると共に改めて危機意識が芽生えたのですが、私と同じように看板を見てどれだけ多くの人に伝わったのかというのはとても興味深いです。事あるごとに、何かのタイミングで思い返す、ということ自体がもしかすると大きな震災が来るときの対策につながるのではないかと思います。
(もしも)伝わったかどうかももちろん重要ではありますが、伝えようとし続けることや伝え方を工夫し続けていくことが重要なのかもしれないですね。
(梶川さん)また、切り口は変わるかもしれませんが、建設現場でも使う「土嚢袋」などは、自然災害が増えている中で備えておきたいアイテムです。こういった備えておきたいアイテムが、例えば見栄え良くカラフルになっているなどといった備えたいデザインになるだけでも、人々の反応は変わってくると思います。建設現場の中って、昔から変わらない色や形のものがたくさんあって、役には立つんだけど一般の方が利用しづらいなんてことがよくあるように感じます。防災グッズももしかしたらこれに似たようなことがあるのではないでしょうか?デザイン性の良いものにリファインすることで、一般家庭にも必ず備えておかれるようにしていくことができると良いですね。
(もしも)プロダクト開発も確かに大切な取り組みかもしれませんね。私たち「もしもプロジェクト」も継続的に「もしも」の備えを発信し続けられるよう様々な取り組みにチャレンジしていきたいと思います。今日はお忙しい中、お時間をいただき、誠にありがとうございました。